「頑張ったね」より「工夫したね」——スタンフォードの研究が教える、やる気が育つ褒め方
「頭がいいね」という褒め方が逆にやる気を奪う理由とは。ドゥエック博士のグロースマインドセット研究をもとに、子どもの挑戦意欲を育てるプロセス重視の褒め方を整理します。
この記事は「『やればできる』は本当か?」の続編です。
「頭がいいね」が、やる気を奪っていた
「そんなに早く覚えられたなんて、あなたはほんとに頭がいいんだね!」
子どもを褒めるとき、こんな言葉をかけたことはありませんか。これは愛情から出た言葉です。でも、スタンフォード大学の心理学者キャロル・ドゥエック博士の研究によると、この褒め方が意図せず子どものやる気を奪っている可能性があるといいます。
能力を褒められた子どもは「自分は頭が良いか?」「賢く見えているだろうか?」ということに関心を向けるようになり、周囲にそのことを認めてもらおうと振る舞うようになります。そして、博士の研究によれば、能力を褒めると子どもの知能が下がり、努力を褒めると子どもの知能が上がったそうです。
褒め言葉ひとつで、こんなにも違いが出る。最初にこれを知ったとき、私もかなり驚きました。

「固定マインドセット」と「グロースマインドセット」
ドゥエック博士は30年以上の研究を通じて、人の思考パターンには大きく2種類あることを明らかにしました。
ひとつは「硬直マインドセット(固定マインドセット)」——能力を固定的にとらえ、一回の結果ですべてが決まってしまうと考える思考。成功とは自分の賢さを示すことで、困難な問題からは目を背け、短期的に解決可能な課題だけに取り組む傾向が強くなります。
もうひとつは「しなやかマインドセット(グロースマインドセット)」——能力を流動的なものだと捉え、努力こそが人を賢くすると考える思考。この場合、失敗は自分を成長させる糧となります。
わかりやすく言うと、「自分の頭の良さは生まれつき決まっている」と思っている子と、「努力すれば変われる」と思っている子の違いです。
そして、どちらのマインドセットを持つかは、周囲の大人の関わり方——特に「褒め方」——によって大きく変わります。
「頭がいいね」が子どもに伝えてしまうこと
「頭がいいね」「才能がある」という能力への褒め言葉から、子どもが受け取るメッセージは、「早く覚えられないと、頭がよくないんだ」「勉強しない方がいい。じゃないと優秀だとほめてもらえないから」というものです。子どもに自信をつけさせるために良かれと思って伝えている日々のメッセージが、実は子どもに硬直マインドセットを刷り込んでいるのです。
これは親の愛情が間違っているわけではありません。ただ、褒める「対象」が違うのです。
- 能力を褒める → 「今の自分を守ること」に意識が向く → 失敗を恐れて挑戦しなくなる
- 努力やプロセスを褒める → 「成長すること」に意識が向く → 失敗を糧にして挑戦し続けられる
「努力を褒める」にも落とし穴がある
ただし、ここで注意が必要です。「努力を褒めればいい」と単純に理解してしまうと、別の落とし穴にはまることがあります。
ドゥエック博士は「結果の出なかった努力を褒めちぎるのは間違い」とも述べています。褒めるべきは「努力」そのものではなく「学習プロセス」——どのようにして問題に取り組み、どのような解決策を考え出したのかということだ、と。
つまり「頑張ったね」だけでは不十分で、「どんなふうに工夫したの?」「どこが難しかった?次はどうしてみる?」という、プロセスへの具体的な関心が大切なのです。
今日から使える「グロースマインドセット」を育てる言葉
前回のコラムで「やらない子の心理」を見てきましたが、グロースマインドセットはまさにその解決策のひとつです。「どうせ無理」「失敗したくない」という思い込みを少しずつほぐしていくのが、この褒め方のアプローチです。
具体的に言葉を変えるとすると、こんなイメージです。
| 結果への言葉 | プロセスへの言葉 | |---|---| | 「頭いいね」 | 「どうやって解いたの?教えて」 | | 「才能あるね」 | 「毎日練習してたもんね」 | | 「簡単だったでしょ」 | 「難しそうだったのに最後まで向き合ったね」 | | 「なんでできないの」 | 「どこで詰まった?一緒に考えようか」 |
大きく変えなくていいんです。「結果」ではなく「そこに至るまでの過程」に目を向けた一言を、ひとつ添えるだけで違います。
キャロル・ドゥエックが親に伝えたいこと
ドゥエック博士はこんな言葉を残しています。
「もし、親が子供に贈り物をしたいと思うなら、子供が挑戦を愛し、間違いに興味を持ち、努力を楽しみ、学び続けることを教えるのが一番です。そうすれば、子どもは褒められる奴隷になる必要はない。子どもたちは一生、自分自身の自信を築き、修復する方法を手に入れることができるのです」
「褒められるためにやる」ではなく「学ぶこと自体が楽しい」と感じられる子どもに育てること。それが、長い目で見て最も強いやる気の土台になります。
今日から、ひとつだけ試してみてください。「頭がいいね」の代わりに「どうやったの?」と聞いてみることから。
参考文献
- キャロル・S・ドゥエック著、今西康子訳『マインドセット「やればできる!」の研究』草思社(2016年)
- 要約サービスflier「マインドセット / 「やればできる!」の研究」
- GIGAZINE「能力や素質は成長できるとする思考様式『グロース・マインドセット』で陥りやすい落とし穴とは?」
- キャロル・ドゥエック博士の言葉、マインドセット概要サイト(Storyshots)より
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