志望校は、誰が決めているのか——「子どもが選んだ」と言えるための関わり方
中学受験の志望校選びで、子どもが「自分で選んだ」と感じているかどうかは、受験期間の粘り強さや合否後の気持ちに影響します。親主導になりすぎない関わり方を整理します。
志望校は、誰が決めているのか——「子どもが選んだ」と言えるための関わり方
子どもが志望校を「自分で選んだ」と感じているかどうかで、受験期間の過ごし方も、合否後の気持ちも大きく変わります。親の関わり方を整理します。

「第一志望はどこ?」と聞いたとき、子どもが即答できるか。そしてその理由を、自分の言葉で話せるか。
中学受験の志望校選びは、多くの家庭で親主導になりがちです。学校見学に連れて行くのも、偏差値を調べるのも、塾の先生に相談するのも、ほとんどが保護者です。それ自体は悪いことではありません。ただ、気づかないうちに「親が選んだ学校を受けさせる」という構図になってしまっていることがあります。
志望校を「自分で選んだ」と感じているかどうかで何が変わるか
受験勉強は長期戦です。うまくいかない日、やめたくなる日は必ず来ます。そのとき子どもを支えるのは、「自分がここに行きたい」という気持ちの強さです。
動機づけ研究では、自分で決めた目標に向かうとき(自律的動機づけ)と、誰かに決められた目標に向かうとき(統制的動機づけ)とでは、困難に直面したときの粘り強さに大きな差が出ることが示されています(Deci & Ryan, 2000)。簡単に言えば、「自分で選んだ」と感じている子どもの方が、壁にぶつかったときに踏ん張れる。
また、合否の結果を受け取るときの気持ちにも差が出ます。親に決めてもらった学校に落ちた子どもは「やっぱり自分には無理だった」と感じやすく、自分で選んだ学校に落ちた子どもは「次どうするか」を考えやすい傾向があります。選んだプロセスが、結果を意味あるものにするのです。
親主導になりがちなのは、なぜか
保護者が積極的に関わるのは、愛情の表れです。情報量でも経験値でも、圧倒的に大人の方が上です。塾の偏差値ライン、学校の校風、通学時間、進学実績——こうした情報を小学4〜5年生が自分で収集して判断するのは難しい。
ただ、一歩間違えると「情報提供」が「誘導」になります。「ここはどう思う?」と聞きながら、実は答えをもう決めている。子どもが「うん、いいと思う」と言うのを待っている。こういうやりとりを繰り返すと、子どもは「どうせ親が決めたい学校に行くことになる」と感じるようになり、志望校への気持ちが薄れていきます。
おおたとしまさ氏は、「子どもが志望校を自分のものにするためには、どこかで必ず『自分で選んだ』という経験が必要だ」と語っています(おおたとしまさ, 2022)。
子どもが「選んだ」と感じるために、できること
大切なのは、判断そのものを子どもに任せることではなく、選ぶプロセスに子どもを巻き込むことです。
学校見学を一緒に振り返る。見学後に「どんなところが気になった?」「通ってる生徒さんはどんな感じだった?」と聞く。「いい学校だったね」で終わらせず、子ども自身の感想を引き出す。
比べる視点を渡す。「この学校とあっちの学校、どっちが自分に合ってると思う?何が違うと感じた?」という問いは、子どもを主体にする問いです。正解を求める質問ではなく、考えるための質問。
「ここを受ける理由」を子どもの言葉で話せるようにする。面接対策にもなりますが、それ以前に、「自分がなぜここを受けるのか」を言語化できている子どもは、受験当日も揺れにくい。
「あなたが行きたいと思うなら、全力でサポートする」という姿勢を、言葉にして伝えることも大切です。
親が選んでいいこともある
ここまで書いてきましたが、すべてを子どもに決めさせる必要はありません。受験校の数や組み合わせ(チャレンジ校・実力相応校・安全校のバランス)は、保護者と塾が主導して決めるべきことです。子どもに「全部決めていいよ」と言いすぎると、プレッシャーになることもある。
大事なのは、「第一志望だけは、子どもが自分のものにしている」という状態です。そこに向かう気持ちが本人のものであれば、多少の壁は越えられます。
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参考文献・出典
- Deci, E.L., & Ryan, R.M. (2000). The "what" and "why" of goal pursuits: Human needs and the self-determination of behavior. Psychological Inquiry, 11(4), 227–268.
- おおたとしまさ『勇者たちの中学受験』大和書房(2022年)
- 安永吉光さんへのインタビュー、ソクラテスのたまご(2024年)
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