「海」「池」「泳」はなぜ似ている?部首から見つける漢字の仲間
この記事の要点
さんずい・ごんべん・にくづきなどを例に、部首と漢字の構成部分の違い、意味や音を見つけるコツ、似た部首の見分け方を紹介します。小学生向けクイズ付きです。
「海」「池」「泳」の左側には、どれも「氵」があります。
「話」「読」「語」の左側には、「訁」があります。
同じ形に注目すると、「水に関係する漢字かな」「言葉や伝えることに関係する漢字かな」と、初めて見る漢字の意味を予想できることがあります。
この共通部分を、どれも「部首」と呼んでよいのでしょうか。実は、漢字の構成部分と、辞書で使う部首は、よく重なりますが同じものではありません。
今回は、さんずい・ごんべん・にくづきなどを入り口に、部首の役割と、漢字の形から意味や音を探る面白さを見ていきましょう。
まず覚えたいこと
部首は、漢字を辞書で分類・検索するための「見出し」のようなものです。
漢字を作っているそれぞれの部分には、意味や音の手がかりになるものがあります。ただし、部首だけで全ての漢字の意味や成り立ちが分かるわけではありません。
「部首」と「漢字の部分」は同じ?
「海」は、「氵」と「毎」に分けて見ることができます。このうち、漢和辞典で「海」を分類するときの部首は「水」です。「氵」は、水が左側に置かれた形で、さんずいと呼ばれます。
一方、「毎」も「海」を作っている大切な部分ですが、「海」の部首ではありません。
この違いを整理すると、次のようになります。
| 言葉 | 役割 | 「海」で見ると |
|---|---|---|
| 構成部分 | 漢字を形づくる点画のまとまり | 「氵」と「毎」 |
| 部首 | 辞書で漢字を分類・検索するための項目 | 「水(氵)」 |
一つの漢字は、辞書では一つの部首の下に分類されるのが基本です。ただし、どの部分を部首にするか、部首をいくつ設けるかは辞書によって異なる場合があります。
文化庁の国語審議会資料も、漢字を理解するときの「構成部分」と、辞書の配列に使う「部首」を分けて説明しています。部首名を覚えるだけでなく、ほかの部分がどんな働きをしているかまで見ると、漢字の仕組みが分かりやすくなります。
部首は、漢字を探すために整理されてきた
部首の歴史は、漢字を分類して並べる方法の歴史でもあります。
中国の古い字書『説文解字』は、小篆の文字を540部に分けました。その後、明代の字書『字彙』が214部に整理し、清代の『康熙字典』もこの214部の仕組みを引き継ぎました。
214部は、その後の漢和辞典に大きな影響を与えました。ただし、現在の辞書には、調べやすさを考えて部首を増減したり、分類を工夫したりしているものもあります。
「この漢字の部首は絶対に一つの答えしかない」と考えるより、学校で使う辞書や問題集の凡例を確かめることが大切です。
「へん」「つくり」「かんむり」は位置の名前
漢字の部分は、置かれる場所によって、へん・つくり・かんむり・あし・たれ・にょう・かまえなどと呼ばれます。
| 位置の名前 | 場所 | 例 |
|---|---|---|
| へん | 左側 | にんべん(休)、きへん(校)、さんずい(海) |
| つくり | 右側 | りっとう(別)、おおざと(都)、ふるとり(難) |
| かんむり | 上側 | うかんむり(家)、くさかんむり(花) |
| あし | 下側 | こころ(思)、れっか(熱)、さら(盛) |
| たれ | 上から左下を覆う | まだれ(店)、がんだれ(原) |
| にょう | 左から下へ伸びる | しんにょう(道)、そうにょう(起) |
| かまえ | 外側から囲む | くにがまえ(国)、もんがまえ(間) |
「へん」や「かんむり」は、まず漢字の中の位置や形を表す呼び方です。「きへん」「さんずい」のような呼び名には、もとの字や位置の情報も含まれています。
漢字の一部になると、形が変わる
漢字はおおむね正方形の中に収まります。そのため、ほかの部分と組み合わさると、幅が細くなったり、点画が変化したりするものがあります。
| もとの字 | 変化した形 | 呼び名 | 例 |
|---|---|---|---|
| 水 | 氵 | さんずい | 海・池・泳 |
| 手 | 扌 | てへん | 持・打・投 |
| 心 | 忄 | りっしんべん | 情・性・快 |
| 言 | 訁 | ごんべん | 話・読・語 |
| 示 | 礻 | しめすへん | 神・社・福 |
| 衣 | 衤 | ころもへん | 初・袖・被 |
| 犬 | 犭 | けものへん | 独・猫・猿 |
| 火 | 灬 | れんが・れっか | 点・熱・照 |
「氵は水」「扌は手」「忄は心」と、もとの字と結び付けると、形だけでなく意味も思い出しやすくなります。
ただし、「灬」には注意が必要です。漢和辞典では「火」の部にまとめられ、れんが・れっかと呼ばれますが、「点」のように、現在の意味や字の成り立ちを単純に「火」で説明できない漢字も含まれます。辞書の分類と、一字一字の成り立ちは別に確かめるのが安全です。
共通する部分は「意味の仲間」を探すヒント
同じ部分を持つ漢字を集めると、意味のまとまりが見えることがあります。
さんずい「氵」
海・河・池・湖・洗・泳・流など、水や液体、その動きに関係する漢字が多くあります。
ごんべん「訁」
話・語・読・記・説など、言葉や伝えることに関係する漢字が多くあります。
てへん「扌」
打・持・投・拾・指・押など、手の動作に関係する漢字が多くあります。
りっしんべん「忄」
情・快・怖・悩・憎など、心の働きや感情に関係する漢字が多くあります。
ここで大切なのは、「同じ部首なら、必ず同じ意味」と決め付けないことです。部首はまず辞書の分類です。また、漢字は長い歴史の中で意味や形が変化してきました。
「この部分から、どんな意味を予想できるだろう」と考え、辞書で確かめるための手がかりにしましょう。
「河」の右側は、読み方の手がかり
「河」は、意味を表す部分と音を表す部分を組み合わせた形声文字です。
- 氵:水に関係する意味の手がかり
- 可:「カ」という音の手がかり
「氵」が「河」の部首であるだけでなく、字の成り立ちの中でも意味を受け持っている例です。
形声文字では、音を表す部分が現代の読みと完全には一致しないこともあります。それでも、「どの部分が意味で、どの部分が音だろう」と考えると、漢字を一字のかたまりではなく、小さなパズルのように見られます。
よく似た形を見分けよう
「月」と「にくづき」
「期」「朝」「望」などが入る「月」の部と、「胸」「腹」「脳」「腕」などが入る「肉」の部は、別の部首です。
体に関係する漢字の「月」に見える部分は、多くが「肉」に由来し、にくづきと呼ばれます。今の印刷文字ではほとんど同じ形に見えるため、意味が見分ける手がかりになります。
- 月の部:月・朝・期・望
- 肉の部:肺・胸・腹・脳・腕
左右で違う「阝」
「阝」は、置かれる側によって、もとの字も部首も異なります。
| 位置 | 呼び名 | もとの字 | 例 |
|---|---|---|---|
| 左 | こざとへん | 阜(おか・高い土地) | 院・陸・階・陽 |
| 右 | おおざと | 邑(むら・人の住む所) | 都・部・郡・郷 |
同じ「阝」に見えても、左ならこざとへん、右ならおおざとです。形だけでなく、位置まで見る必要があります。
「礻」と「衤」
しめすへんと、ころもへんもよく似ています。
- しめすへん「礻」:神・社・福・祝
- ころもへん「衤」:初・袖・被・補
「初」は「衣」と「刀」から成り、衣服を作る最初の裁断から「はじめ」の意味を表した、と説明されます。現在の意味だけでは見えにくい「衣」とのつながりが、成り立ちを調べると見えてきます。
家庭学習では「形・位置・意味」をセットに
部首名だけを一覧で暗記するより、漢字を実際に並べて比べると、違いに気付きやすくなります。
1. 仲間集めをする
「氵の漢字を五つ探そう」「扌の漢字をノートから探そう」と、知っている漢字を集めます。
2. 共通する意味を言葉にする
集めた漢字を見て、「水に関係しそう」「手を使う動作が多い」と共通点を話します。例外が見つかったら、失敗ではなく辞書を引くきっかけです。
3. もう一方の部分にも注目する
「河」の「可」のように、読み方の手がかりが隠れている場合があります。部首だけで終わらず、残った部分も見てみましょう。
4. 似た形は並べて比べる
「月とにくづき」「こざとへんとおおざと」「しめすへんところもへん」を並べ、位置・画数・意味のどこが違うか説明します。
「答えを当てる」だけでなく、「なぜそう考えたか」を言葉にすると、漢字を見る目が育っていきます。
クイズコーナー
最後に、部首と漢字の部分について確かめましょう。
Q1「海」「泳」「湖」に共通する部首は何ですか?
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解説:左側の「氵」は、水が形を変えたものです。これらの漢字は水に関係しています。
Q2「話」「読」「語」に共通する左側の部分は何ですか?
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解説:「言」が左側で形を変えたもので、言葉や伝えることに関係する漢字に多く見られます。
Q3「胸」の左側にある「月」に見える部分を何と呼びますか?
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解説:月ではなく「肉」に由来する部分です。体に関係する漢字に多く見られます。
Q4「都」の右側にある「阝」を何と呼びますか?
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解説:右側の「阝」は「邑」に由来します。左側の「阝」は、阜に由来するこざとへんです。
Q5「神」の左側は、しめすへんところもへんのどちらですか?
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解説:「神」「社」「福」などに使われます。ころもへんは「衤」で、「初」「袖」などに使われます。
Q6「河」の「可」は、主に何の手がかりになっていますか?
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解説:「河」は形声文字で、「氵」が意味を、「可」が音を表す手がかりになっています。
Q7部首が同じなら、全ての漢字の意味を正確に当てられますか?
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解説:部首は意味を予想する助けになることがありますが、まずは辞書の分類です。意味や成り立ちは一字ずつ確かめます。
Q8漢字の左側・右側・上側を表す位置の名前を、それぞれ答えましょう。
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解説:ほかに、下側の「あし」、左から下へ伸びる「にょう」、外側を囲む「かまえ」などがあります。
もっと漢字の部分の働きを確かめたいときは、漢字の成り立ちクイズプリントにも挑戦してみてください。意味を表す部分と音を表す部分を見分ける練習にもつながります。
関連プリント
まとめ
部首は、漢字を辞書で分類・検索するための仕組みです。一方、漢字を作るそれぞれの部分には、意味や音の手がかりになるものがあります。
- 「氵」「訁」「扌」などから、意味の仲間を予想できることがある
- へん・つくり・かんむりなどは、漢字の中の位置を表す
- 「月とにくづき」「左右の阝」のように、同じ形に見えても由来が違うものがある
- 形声文字では、意味を表す部分と音を表す部分を探せる
- 部首は便利な手がかりだが、全ての意味や成り立ちを決める絶対的なルールではない
漢字を見たときに、「どの部分が意味を表すのかな」「読み方のヒントはあるかな」と考えてみましょう。漢字が、暗記するだけの記号ではなく、意味と歴史を持つ小さなパズルのように見えてきます。
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