「五月」はなぜ「さつき」?一字ずつ読めない「熟字訓」の話
この記事の要点
五月(さつき)・今日(きょう)・お神酒(おみき)を例に、一字ずつでは読めない熟字訓の仕組みと言葉の歴史を紹介します。小学生向けクイズと国語プリントへのリンク付きです。
「五月」と書いて「さつき」。
「五」は「ご」や「いつ」、「月」は「げつ」や「つき」と読みます。どの読みを組み合わせても、「さつき」にはなりません。
それでも私たちは、「五月雨」を「さみだれ」、「今日」を「きょう」、「大人」を「おとな」と読みます。こうした言葉には、日本語と漢字が出会ってきた歴史が隠れています。
今回は、一字ずつには分けにくい特別な読み方「熟字訓(じゅくじくん)」を、身近な言葉から見ていきましょう。
まず覚えたいこと
熟字訓は、二字以上の漢字のまとまり全体に、日本語の読みを当てたものです。
「今日(きょう)」「大人(おとな)」「五月(さつき)」のように、一字ずつの音読み・訓読みをつないでも、その読みにはなりません。
一字ずつではなく、まとまりで読む
「今日(きょう)」「明日(あす)」「大人(おとな)」「果物(くだもの)」。
これらは、漢字の並び全体に一つの読みが結び付いています。「今日」の「今」を「き」、「日」を「ょう」と読むわけではありません。
このように、二字以上の漢字で表す言葉を一まとまりとして訓読みすること、またはその読みを「熟字訓」と呼びます。
文化庁の「常用漢字表」には、一般の社会生活で漢字を使うときの目安となる2,136字と、その音訓が示されています。その後ろには「付表」があり、「今日(きょう)」「五月(さつき)」「お神酒(おみき)」など、一字ずつの音訓として示しにくい言葉が、語の形でまとめられています。
付表に載っていない熟字訓もあります。「付表にある言葉だけが熟字訓」というわけではありません。
なぜ、漢字から読みを取り出せないの?
漢字は中国から日本へ伝わった文字です。日本では、漢字の音を取り入れるだけでなく、漢字の意味に合う日本語を結び付けて読むようになりました。これが訓読みです。
「山」に「やま」、「川」に「かわ」という日本語を結び付けた場合は、一字ごとに読みを対応させられます。
一方、熟字訓では、その結び付きが言葉全体で起こります。
- 「今日」というまとまりに「きょう」
- 「大人」というまとまりに「おとな」
- 「果物」というまとまりに「くだもの」
漢字一字ずつの読みを足して言葉ができたのではなく、すでに使われていた日本語の言葉と、意味の合う漢字のまとまりが結び付いたと考えると、仕組みが見えやすくなります。
漢字を言葉に着せる「意味の服」だと考えてみましょう。服の模様を一部分ずつ見ても名前が分からないように、熟字訓も漢字のまとまりごと読む必要があります。
「五月」は、なぜ「さつき」?
「さつき」は、旧暦の5月を表す日本語の呼び名です。「皐月」とも書きます。
つまり、「五」を「さ」、「月」を「つき」と読むのではありません。旧暦5月という意味を表す「五月」全体に、「さつき」という読みが結び付いているのです。
ここでいう旧暦は、現在のカレンダーとは仕組みが違います。現在の暦の日付に直すと年によってずれるため、「旧暦5月は、いつでも現在の6月」とぴったり決めることはできません。ただし、季節としては梅雨のころと重なります。
その名残が、今も使われる次の言葉です。
五月雨(さみだれ)
気象庁は「さみだれ」を、旧暦5月に降る梅雨期の雨と説明しています。今では、物事が一度で終わらず、間を置いて繰り返される様子を「五月雨式」と表すこともあります。
五月晴れ(さつきばれ)
もともとは、旧暦5月の梅雨の合間の晴れを指す言葉でした。現在は「5月の晴天」という意味でも広く使われ、気象庁の用語集にもその使い方が示されています。
暦が変わり、言葉が使われる季節の感じ方も少しずつ広がっていったのです。
「お神酒」の「き」は、昔の「酒」
「お神酒」は「おみき」と読み、神前に供える酒を指します。
「みき」は「酒」の美称・敬称で、古い日本語では「き」が酒を意味しました。そこに敬意を表す「み」が付いた「みき」という形に、さらに「お」が付いて「おみき」となっています。
「酒」という漢字を、現代の一般的な読みである「さけ」や「しゅ」と読んでも、「みき」にはなりません。ここにも、昔の日本語が言葉の中に残っています。
身のまわりの熟字訓
熟字訓は、古い行事や改まった言葉だけにあるものではありません。毎日の会話や、小学校で読む文章にもたくさん登場します。
| 表記 | 読み | 言葉の意味・ポイント |
|---|---|---|
| 眼鏡 | めがね | 「がん」「きょう」をつないだ読みではない |
| 迷子 | まいご | 「まよいご」が変化した言葉 |
| 八百屋 | やおや | 野菜や果物を売る店や人 |
| 二十日 | はつか | 月の20番目の日、または20日間 |
| 七夕 | たなばた | 7月7日に行う行事の名前 |
| 清水 | しみず | 澄んできれいな水 |
| 今朝 | けさ | 今日の朝 |
| 木綿 | もめん | 綿の繊維から作る糸や布 |
どれも文化庁の常用漢字表の付表に載っている言葉です。特別な読み方といっても、私たちが普段から使っている言葉が多いことに気付きます。
熟字訓と当て字は同じ?
熟字訓と一緒に「当て字」という言葉を見かけることがあります。
大まかに分けると、熟字訓は漢字の意味に合う日本語をまとまり全体に当てたものです。一方、「珈琲(コーヒー)」のように、主に漢字の音を借りて外国語などを書き表したものも当て字と呼ばれます。
ただし、辞書や教材では「熟字訓・当て字」とまとめて扱うこともあります。小学生の学習では、まず「一字ずつに分けず、言葉と読みをセットで覚える」ことを意識すれば十分です。
覚えるときは、短い文と一緒に
熟字訓は、一字ずつの読みから推測しにくいため、言葉だけを何度も書くより、意味の分かる短い文の中で覚えると使い方まで身に付きます。
- 今日(きょう)は図書館へ行く。
- 五月(さつき)は旧暦5月の呼び名だ。
- 神前にお神酒(おみき)を供える。
- 二十日(はつか)に発表会がある。
「どんな場面で使う言葉か」「漢字がどんな意味を表しているか」も一緒に確かめてみましょう。
クイズコーナー
最後に、熟字訓と昔の言葉について確かめましょう。
Q1「五月雨」は何と読みますか?
答えを見る
解説:旧暦5月の雨、つまり梅雨期の雨を表す言葉です。
Q2「お神酒」は何と読み、何を指しますか?
答えを見る
解説:古い日本語で酒を表した「き」が、「みき」「おみき」という形に残っています。
Q3「今日」の「きょう」は、「今」と「日」のどちらに分けて当てられますか?
答えを見る
解説:「今日」という漢字のまとまり全体に「きょう」という読みが結び付いています。
Q4「二十日」は何と読みますか?
答えを見る
解説:月の20番目の日、または20日間を表します。
Q5漢字のまとまり全体に日本語の読みを当てる読み方を何と呼びますか?
答えを見る
解説:「今日」「明日」「大人」「果物」など、身近な言葉にも多く見られます。
Q6「五月晴れ」は、もともとどんな天気を指しましたか?
答えを見る
解説:旧暦5月が梅雨のころと重なるためです。現在は、5月の晴天という意味でも使われます。
もっと読み方を練習したいときは、この記事に登場した「五月」と「お神酒」が入った特別な読み方プリントに挑戦してみてください。
関連プリント
まとめ
熟字訓は、二字以上の漢字のまとまり全体に、日本語の読みを当てたものです。
- 今日(きょう)や大人(おとな)は、一字ずつに分けて読めない
- 五月(さつき)は、旧暦5月を表す言葉と「五月」の表記が結び付いた読み
- 五月雨(さみだれ)や五月晴れには、旧暦と梅雨の関係が残っている
- お神酒(おみき)の「き」には、酒を表す古い日本語が残っている
熟字訓をただの「特別な読み」として暗記するだけでなく、「なぜこの漢字で、この読みなのだろう」と立ち止まってみると、言葉の歴史まで見えてきます。
参考文献
学習でのおすすめアイテム

子供の科学 掲載 勉強タイマー
集中時間を見える化できる学習タイマー。家庭学習の習慣づけをサポートします。

【お風呂で勉強】2枚セット (①たし算/ひき算 ②かけ算)
お風呂に貼れる防水ポスターで、たし算・ひき算・かけ算を毎日自然に復習できます。

首都圏 中学受験案内 2027年度用
66年の歴史をもつ首都圏中高一貫校選びの決定版。私立・国立・公立中高一貫校約370校を収載。思考力の新評価基準「思考コード」も採用。

後悔しない中学受験100 親が知っておきたいこと、できること
2万人超の受験生親子を合格へ導いたプロ講師が、塾選び・志望校・模試・直前期の親の関わり方まで100のヒントを紹介。
記事ナビゲーション
この記事が最新の記事です。
