「扇状地」と「三角州」は何が違う?川がつくる地形のひみつ
この記事の要点
扇状地と三角州の違いを、甲府盆地東部の果樹栽培、広島の三角州、濃尾平野の輪中から解説。小学生向けクイズと無料プリントへのリンク付きです。
同じ川が運んだ土砂からできているのに、果樹園が広がりやすい土地と、田んぼや大きな街がつくられやすい土地があります。
その代表が「扇状地(せんじょうち)」と「三角州(さんかくす)」です。どちらも川が土砂を積もらせてできる地形ですが、できる場所も、積もる土砂の大きさも違います。
今回は、二つの地形を見分けるポイントを、山梨県の果樹栽培、広島市の街、濃尾平野の輪中といった実際の土地と結びつけて見ていきましょう。
まず覚えたいこと
扇状地は、川が山地から平地へ出るところにできる地形です。
三角州は、川が海や湖へ注ぐ河口付近にできる地形です。土地利用は地域によって違いますが、扇状地では果樹園、三角州などの低く平らな土地では水田や市街地が見られます。

扇状地と三角州、何が違う?
まずは、二つの地形を表で比べてみましょう。
| 比べるところ | 扇状地 | 三角州 |
|---|---|---|
| できやすい場所 | 山地から平地へ出る谷の出口 | 川が海や湖へ注ぐ河口付近 |
| 形・傾き | 谷の出口を頂点に扇のように広がり、ゆるく傾く | 低く平らで、海側へ張り出す |
| 積もりやすいもの | 小石や砂など、比較的粗い土砂 | 砂や泥など、比較的細かな土砂 |
| 水の特徴 | 水が地中へしみ込みやすい場所が多い | 地下水位が高く、水がたまりやすい場所が多い |
| よく見られる土地利用 | 果樹園、畑、扇端の集落や水田 | 水田、市街地、工業用地 |
川は、流れる速さや水の量に応じて土砂を運びます。山地の急な谷を流れてきた川が平地へ出ると、傾きがゆるくなり、運ぶ力が弱まります。そこで、小石や砂などが谷の出口から扇のように積もっていきます。これが扇状地です。
川がさらに下流へ進み、海や湖へ注ぐところでは、流れがいっそうゆるやかになります。上流から運ばれてきた砂や泥が河口付近に積もり、低く平らな土地が海側へ広がっていきます。これが三角州です。
名前に「三角」とつきますが、すべてがきれいな三角形になるわけではありません。川の流れ、波、潮の満ち引き、海岸の形などによって、三角州の形は変わります。
山の出口で粗い土砂を先に置き、河口近くまで運べた細かな土砂をあとで置く。
この「川による土砂のふるい分け」をイメージすると、二つの違いがわかりやすくなります。ただし、実際の地形は川の大きさや地質によってさまざまで、土砂の種類も一つだけではありません。
扇状地では、水がどこへ行く?
扇状地の頂点にあたる部分を「扇頂(せんちょう)」、中央を「扇央(せんおう)」、扇の先の部分を「扇端(せんたん)」といいます。
扇状地には小石や砂が多く、水がしみ込みやすい場所があります。川の水が地中へもぐり、地下を流れる水は「伏流水(ふくりゅうすい)」と呼ばれます。地下へ入った水が扇端付近で湧き出すこともあります。
そのため、典型的な扇状地では土地の使われ方に違いが見られます。
- 水がしみ込みやすい扇央:果樹園や畑
- 湧き水などを得やすい扇端:集落や水田
ただし、これはすべての扇状地に当てはまる決まりではありません。用水路や井戸が整備された地域では水田もつくられます。現在の土地利用を見るときは、地形だけでなく、人がどのように水を引いてきたかも確かめることが大切です。
甲府盆地の扇状地と、ぶどう・桃
扇状地と果樹栽培のつながりを見つけやすいのが、山梨県の甲府盆地周辺です。
特に甲府盆地東部の峡東地域には、川がつくった扇状地の傾斜地が広がっています。農林水産省によると、この地域では土壌、地形、気象などに合わせ、ぶどうや桃をはじめとするさまざまな果樹が栽培されてきました。「峡東地域の扇状地に適応した果樹農業システム」は、2022年に世界農業遺産に認定されています。
水はけや日当たりのよさ、斜面ごとの気候の違いなどを読み取り、「どの場所で、どの果樹を育てるか」を長い時間をかけて工夫してきたのです。
ここで大切なのは、「扇状地なら自動的に果物がよく育つ」と考えないことです。果樹栽培を支えているのは、地形の特徴だけではありません。品種選び、棚づくり、水の確保、土が流れないようにする工夫など、人の知恵と技術も大きな役割を果たしています。
三角州では、なぜ田んぼや街が広がる?
三角州は、河口付近にできる低く平らな土地です。細かな砂や泥が多い場所では水を保ちやすいため、水田に利用されてきました。
また、土地が平らで、川や海を使った交通に便利なことから、港や街が発達した三角州もあります。土砂が自然に積もった部分だけでなく、人が海を干拓したり埋め立てたりして、土地を広げてきたところも少なくありません。
一方で、低い土地には注意も必要です。三角州や干拓地は、川の洪水、内水氾濫、高潮などの影響を受けやすい場所があります。堤防や排水施設が街を守っているため、「平らで使いやすい土地」と「水害に備える必要がある土地」という二つの面を持っています。
広島市は太田川の三角州に広がった
広島市の中心部は、太田川が運んだ土砂によってできた三角州の上に広がっています。
国土交通省の資料によると、広島市の都心地域は、原始・古代にはほとんどが海でした。その後、太田川が運ぶ土砂によって砂州や自然堤防ができ、中世には三角州の上流部が形成されました。広島城の築城をきっかけに城下町が整えられ、干拓によって土地がさらに広げられていきました。
現在の市内では、太田川放水路、旧太田川、元安川、京橋川、猿猴川、天満川という6本の川が流れています。地図で見ると、川と川の間に細長く街が広がる、三角州らしい形を確かめられます。
広島の街は、自然にできた三角州だけで完成したのではありません。
太田川が土砂を運ぶ → 三角州ができる → 城下町をつくる → 干拓や治水で土地を使いやすくする
という、川の働きと人の働きが重なって発展してきたのです。
濃尾平野の輪中は、水と暮らす知恵
愛知県・岐阜県・三重県にまたがる濃尾平野には、木曽川・長良川・揖斐川が流れています。この三つをまとめて「木曽三川(きそさんせん)」と呼びます。
濃尾平野は、木曽三川が長い年月をかけて運んだ土砂によってつくられた沖積平野です。場所によって、扇状地、自然堤防、三角州など、川がつくったさまざまな地形が見られます。
豊かな水と土は農業を支えましたが、下流の低い土地では洪水が繰り返されました。そこで人々は、集落や耕地の周りを堤防で囲む「輪中(わじゅう)」をつくりました。
輪中の中では、洪水に備えて母屋より高い場所に「水屋(みずや)」を建て、避難場所にしたり、米やみそなどを保管したりしました。土地が低く水はけの悪い場所では、土を掘って一部を高くし、その上で米を育てる「堀田(ほりた)」という工夫も見られました。
地形は、人の暮らしを一方的に決めるものではありません。人々は土地の特徴を読み、水を利用し、ときには水から身を守る仕組みをつくって暮らしてきました。
地図で見分ける三つの手がかり
地図や空中写真で扇状地と三角州を探すときは、次の順番で見てみましょう。
- 山と海の位置を見る:山の出口なら扇状地、河口付近なら三角州の可能性があります。
- 川の形を見る:谷の出口から放射状に広がる地形か、河口で川が分かれている低地かを確かめます。
- 土地の使われ方を見る:果樹園、水田、市街地、堤防などを地形と結びつけます。
地図記号も手がかりになります。果樹園の記号が山のふもとにまとまっていないか、水田の記号が河口の低地に広がっていないかを探してみてください。
クイズコーナー
最後に、川がつくる地形と暮らしのつながりを確かめましょう。
Q1川が山地から平地へ出るところにできやすい地形は、「扇状地」と「三角州」のどちらですか?
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解説:山地の急な谷から平地へ出ると川の流れが弱まり、小石や砂などが扇のように積もります。
Q2川が海や湖へ注ぐ河口付近にできやすい地形は何ですか?
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解説:河口付近で流れがゆるやかになり、運ばれてきた砂や泥が積もってできます。
Q3扇状地の中央部で果樹園が見られることが多いのはなぜですか?
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解説:果樹園の広がりは、水はけだけでなく、日当たり、気候、水の確保、人の栽培技術などにも支えられています。
Q4太田川の三角州の上に中心市街地が広がる都市はどこですか?
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解説:太田川が運んだ土砂で三角州ができ、城下町の整備、干拓、治水を重ねて街が発展しました。
Q5木曽川・長良川・揖斐川をまとめて何と呼びますか?
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解説:三つの川が流れる濃尾平野の低地では、洪水に備える輪中がつくられました。
Q6濃尾平野で、集落や耕地の周りを堤防で囲んだ地域を何といいますか?
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解説:洪水から暮らしを守るための仕組みです。高い場所に建てた水屋などの備えも見られました。
さらに地理のつながりを広げたいときは、「川をたどると、平野と都市が見えてくる。小学生の日本地理」と、「山脈は“日本の天気の壁”だった!小学生の日本地理」もあわせて読むと、山・川・平野・都市を一本の流れで整理できます。
まとめ
扇状地と三角州は、どちらも川が土砂を積もらせてできる地形です。
- 扇状地:山地から平地へ出るところ。小石や砂が多く、果樹園が見られることがある
- 三角州:海や湖へ注ぐ河口付近。低く平らで、水田や市街地が広がることがある
- 輪中:洪水の多い低地で、暮らしや耕地を守るためにつくられた仕組み
ただ名前と場所を覚えるだけでなく、「川の流れがどこで弱まり、どんな土砂を積もらせたのか」「人はその土地をどう使い、どう守ってきたのか」と考えると、地形と暮らしのつながりが見えてきます。
今度地図で川を見つけたら、山から河口まで指でたどってみてください。山の出口と海の近くでは、土地の形も使われ方も違って見えるはずです。
参考文献
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